子供の頃、塾の帰りに雪が降り始めた。

手袋を持っていなかったので、自転車のハンドルを握る私の手は、みるみる赤くなり、
家に着いた時には冷えきって、ハンドルとブレーキを握った形のまま、
かたまって動かせなくなっていた。

寒さで赤く腫れた私の手を見た母は、驚きつつ、
ストーブの前に手をかざすだけでは、温まるのに時間がかかると思ったのか、
急いで給湯器からお湯を出し、貯めた洗面器の中に私の両手を入れてくれた。

当時の寒さやかじかんだ手の感覚は忘れてしまったが、
洗面器に入った自分の手の甲を見つめながら、あったかいなぁと思ったことを覚えている。
そして、母がお湯を用意してくれたことが嬉しかった。

これは、大したエピソードではない。

でも、子を想う母とその愛情を受け取った私の間には、
確かにお湯以外のあったかいものがあったと思う。

目に見えないあったかいもの、それはどんなに小さくたっていい。
自分のために、誰かのためにと想うその心が大事だと思う。
あったかいものがどんどんどんどん大きくなって広がっていったら、いいなぁ。

 

愛とは、大きな愛情をもって小さなことをすることです。
—マザー・テレサ—